平成26年9月27〜28日、第24回日本医療薬学会年会(名古屋)が開催されました。本年会では、小林亮薬剤師が『優秀演題賞』を受賞しました。今回の受賞の研究テーマは「耳鼻科病棟における病棟薬剤業務の取り組みと評価−有害事象に対する治療および予防による医療経済効果−」であり、病棟業務における薬剤師の有害事象への介入と医療経済効果を評価した研究内容です。
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耳鼻科病棟における病棟薬剤業務の取り組みと評価−有害事象に対する治療および予防による医療経済効果−
平成24年度に「病棟薬剤業務実施加算」が新設されたが、病棟薬剤業務の取り組み内容や成果についての議論は十分には行われていないのが現状である。我々は耳鼻科病棟をモデル病棟として様々な取り組みを行っており、本報告では、有害事象に対する治療効果が入院期間と医療経済効果へ及ぼす影響について検討を行った。2012年10月から1年間に耳鼻科病棟(50床)に入院した全患者を調査対象とし、事前に作成した「病棟薬剤業務実施ワークシート」に、患者の有害事象の発現状況と経過、処方提案内容や提案後の経過等を記録した。18歳以上を解析対象とし、解析を行った。本件等は当院倫理委員会の承認を得て行った。平均入院日数は約19日で、全有害事象発現率は約40%であった(Grade2以上、約30%)。さらに、有害事象のgradeに依存して入院期間は延長していた。Grade 2以上の有害事象の発現率は処方提案等の介入により約1/3に低下しており(P<0.01)、さらに、有害事象が改善した群ではしなかった群と比べて、入院期間が有意に短縮していた(約10日、P<0.01)。入院期間の短縮にともなう医療費削減効果は約3000万円と推算された。またGrade2以上の有害事象が発現しなかった患者とGrade2以上の有害事象が発現した後改善した患者を比較すると、改善した患者では10日程度入院期間が延長している傾向が認められた。このことから重篤な有害事象が発現することは改善した場合にも入院期間延長のリスクとなることが明らかとなった。以上より薬剤師が病棟で処方提案等を行うことは有害事象の回避や軽減に寄与し、入院期間短縮や医療費節減に貢献できることが示唆された。さらに、有害事象の予防に対する取り組みによる医療経済効果を考慮するとさらなる医療費節減効果が期待できることが示唆された。